新聞読み比べで媒体特性を見極め、「私見」を持とう

ペンの森はいま大学3年生が中心の28期だ。今期はこれまでのところ新聞社志望がやや

多い。もちろん出版社やテレビ局、広告代理店もいる。新聞志望は、自分の志望する新聞

の媒体特性を自分なりにイメージしてほしい。それには、各新聞を読み比べしてみること

を勧める。とくに、どの媒体も取り上げるような大きな出来事があった時に比較するのが

わかりやすい。

 9月27日、安倍晋三元首相の国葬があり、翌28日の各紙は一斉に1面から国葬の記事が

載った。朝毎読日経産経の1面の見出しはアイウエオ順に、

朝日 賛否の中 安倍氏国葬 戦後2例目4100人超参列 一般献花に列■周辺でデモ/分断

に責任 首相は行動を 政治部長 林尚行 写真は祭壇の前で明恵夫人から遺骨を受け取る

岸田首相:代表撮影

産経 安倍晋三元首相 国葬 内外4200人参列 献花2万人超/首相弔辞「長さより実績を記

憶」/吉田茂以来55年ぶり/政治家の覚悟と不思議な縁 阿比留瑠比 論説委員兼編集委

員 写真は朝日と同じだが、朝日の1.8倍の大きさ)

日経 安倍元国葬 国内外4200人が参列 日経だけトップではなく2番目の記事として 写真

は朝日、日経と同じ。大きさは朝日の三分の2くらい。

毎日 安倍元首相国葬に4200人 献花にデモ 賛否割れる中/首相は説明尽くしたか 政

治部長 中田卓二 写真は議事堂前で「国葬反対」のプラカードを掲げるデモと、祭壇(

遺骨の受け渡しは写っていない:代表撮影)、安倍晋三氏の顔写真

読売 安倍元首相 国葬 菅氏「真のリーダーだった」/最長政権8年8か月 4183人参列/

海外要人700人 218の国・地域など/皇族7人参列 メーンの写真は朝日、産経と同じ。

朝日と産経の間くらいの大きさ。他に弔辞を読む岸田首相の写真

 朝日と毎日は、国葬に国民の賛否が割れた世論の分断を問題視した。とくに毎日は、デ

モの写真を祭壇と並べている。

 産経と読売は、世論の分断には表立って触れない。産経は、首相弔辞の「長さより事績

を記憶」を引き、さらに「献花2万人」として国民からの国葬支持を印象付ける。読売は

菅前首相の弔辞「真のリーダーだった」を引く。

 日経は、国葬より大きく、<国民年金「5万円台」維持へ>という記事をトップに掲げ

る。経済新聞ならではのスタンスだ。

 朝日・毎日が政権に批判的なのに対して、読売・産経は肯定的――この図式はよく言われ

ていて、国葬報道にもよく表れている。どっちがいい悪いではない。まずは自分で一般に

言われている「俗説」がホントなのか、まず実際の紙面を読んでみてほしい。それに加え

て、その言説にどのくらい説得力があるか、自分なりに判断してほしい。〇〇新聞は

こういう論調だから内定を取るためには自分の意見もそれに合そう、というのは寂しい。

読んでしっくりいく媒体はどこか。なぜ、しっくりするのだろう。なんとなくというのも

つまらない。さらに深く考えてみる。しっくりいく理由には、自分のこれまでの、こう

いう経験や履歴があったからだと、とハタと気づく時がある。その感覚を大切にしてほし

い。

 新米記者のころは「お前の意見がどうのこうのと言う前に、事実を追え」と言われる。

 修業を積むうちにだんだん社会を見る眼が養われ、自分の意見が芽生えてくる。その時

に、あなたのいる新聞は居心地がよいのか、どうか。居心地よくするために会社に合わせ

るという手もあるが、それもやっぱり寂しい。そんな寂しい思いをしないためにも、自分

はどういう新聞に行きたいかを、いまのうちによく見極めてほしい。第一志望に入れない

場合もあるが、納得のいく就活をするためにはたいせつなことだ。

 国葬については、1面の担当部長・編集委員らの書名記事も興味深いが、社説でもそれ

ぞれの新聞の特徴が出ていた。読売の社説「功績たたえ多くの人が悼んだ/外

交遺産を戦略的に活用したい」に対して私見を一言。国葬への批判について、この社説は

<立憲民主党や共産党は、国葬について「内心の自由を侵す。憲法違反だ」と批判した。

だが、国葬への賛否も、弔意の表明も自由に行われたではないか。誰の内心の自由が侵さ

たというのか。>と書いた。国葬への批判の主な論点が、個人の自由の侵害・憲法違反に

あるかのように読める。だが、各種世論調査で国葬への批判が大きくふくらんだのは、

なぜ国葬なのかの判断があいまいで、国会や記者会見などでの岸田首相の説明に、国民の

多くが納得できなかったことがある。そこに、旧統一教会と自民党・安倍氏の問題が

起き、事実究明もあいまいなままに国葬を迎えた。こうした一連の世論に、読売論説は

十分に応えていない。国葬が国民の気持ちをひとつにする方向にならず、むしろ分断の

混乱を招いた。

 一方で、読売4面の「出会い 別れ 菅氏朴訥と」という、菅前首相の弔辞について、

詳しく書いた囲み記事はよかった。末尾の部分を引用すると、

<弔辞の最後には、安倍氏の議員会館の机に読みかけの本が置かれ、明治の元勲・

山県有朋が盟友・伊藤博文を銃撃で失った後に詠んだ歌に線が引かれていたことを明かし

た。/「この歌ぐらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません」と語り、「かたり

あひて 尽くしし人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」との歌で締めくくると、

葬儀会場としては異例の拍手に包まれた。> この記事にはグッときた。

                                  (岩田一平)