どう書く?夏のES

どう書く? 夏のエントリーシート

梅雨をスキップし、ことしの夏はことさら暑い。こんな中、3年生を対象としたマスコミ各社のインターンシップが始まっている。インターンに参加するにも書類選考や面接がある。「採用選考ではありません」とわざわざことわる会社もある。だが、大方はインターンでの実績を見て、のちの選考で有利に扱う。というわけで、3年生から、もうエントリーシート(ES)を書かなければならない。

最初から、うまくESが書ける人はめったにいない。みんな試行錯誤しながら書いている。そこでアドバイスは、まず自分の経験を基にした作文をよく書くことだ。マスコミ採用選考の作文では、課題を出し、それにふさわしい作文を800字程度で書かせる。ひとつのテーマについて、これくらいの長さの文章を書けば、エピソードを交えて自分の考えや思いが深められる。それは、あなたにしか書けない、個性のある、人の気持ちに訴える作文だ。この内容が、ESに応用できるのである。作文は「自己の経験の言語化」ということである。自分を「取材」して、それを「記事」にする。<作文が書けるようになれば、ESが書け、面接もうまくいく>――というのが、瀬下先生以来のペンの森のセオリーである。

 就活本やネット情報などを漁り、見よう見まねでようやく書いたESを身の回りの先輩や先生に見せ、「この志望理由には深みがない」とか「だれでも書いてきそうな内容。これでは通用しない」などと言われ、がっくりする人がいる。そこで、こんどは全然違う内容に書き改める。ここで、じっくり自分を取材し、考えを深めた内容が書ければよいのだが、最初と同じように小手先で目先は異なるESを書く……。その繰り返しで、ESがどんどんあらぬ方向に迷いこんでしまうことがある。

「深みがない」とか、「よくある話」とかと言われた内容も、実はもっと掘り下げたら、あなたならではの経験なのかもしれない。なのに、そこまでいかないで中途半端に方向転換してしまう。確かに、方向転換が必要なESもある。そういう必要があるESには方向転換をアドバイスしている。だいたい志望動機がそうコロコロ変わるはずはないのである。なんで新聞記者になりたいんだろう。新聞記者になってなにをしたいのだろう……。自分の思いをもっと深めてほしい。漠然とした思いをしっかりとした文章に仕上げることだ

アドバイスする側もいきなり相手を否定してはいけない。わたしは、作文やESを読んだら、いきなり添削の赤を入れないで(通信は仕方ないが)、なるべくよく書き手の話を聞くようにしている。「なぜ、そう思ったの?」「きっかけは具体的に何だった?」「のとき、どんなことばを掛けたの?」……。どんどん突き詰めていく。だんだん思考がまとまり、よりイメージが具体的になってくる。「ああ、そうだったんだ」と、書いた本人が思わぬ発見をすることがある。

ESには締め切りがあるから作文なんていまさら書いてられないよというような焦りの声も聞えてくるが、100人中70人に埋もれてしまうESでは、なかなかマスコミ就活では通用しないのである。急がば回れである。そういえば、作家の開高健さんは「悠々と急げ」と言っていた。(岩田一平)