面接テクニックを磨く前にすべきことがある

 4年生春の就活。ことしもNHK、読売、共同、時事、地方紙、大手出版社など、いろいろなところに内定している。出版は激戦でなかなか難しかった。取り切っていないマスコミもあって秋の陣はあるだろう。そして、そろそろ3年生が夏のインターンシップをめがけて来るようになった。インターンシップは採用選考にからめないということになっているが、この機会に有望な学生には目をつけている。そういう人には、選考開始になると声をかける。早い学生は年末には内々定が出たりして、こっちも驚く。

 2年生でもたまに体験受講に来る子がいる。歓迎だが、ちと早いか。就活するまえにもっと大学生としてやっておくことがあるのではないか。スポーツでも、サークル活動でも、ボランティアでも、もちろん大学での勉学でもだ。ペンの森は、作文指導が主体だ。作文は「自分の経験を言語化する」ということである。それができれば、エントリーシート(ES)もかけ、面接もうまくいく。2年生にはまず「自分の経験」を増やしてほしいと思うのである。

 本番近い3年生だが、作文執筆もそこそこに、「ESに何を書いたら通りますか」「本番を想定した面接の練習をお願いします」とくる。就活テクニックを磨くことにばかりに目が行っている。テクニックのまえに、まず「自分が何者か」がわかっていない人がけっこういる。しゃべり方を練習するまえに、しゃべることを見つけなくてはいかない。

 

そのためには、自分がこれまで何をしてきたかを振り返り、その経験のなかから、人に語れるような「宝」を発掘することだ。「高校時代に野球をやっていたが、甲子園も地方大会ベスト8どまりで、とても自慢できるような成績ではありません」などと言う人がいる。こういう学生が、その経験を生かして大学になってからボランティアで子どもたちに野球を教えていたりする。さらに聞くと、高校時代に監督に人格無視のシゴキにあっていて、その反動から、「子どもたちには野球の楽しさを教えたいと思って、いまの活動がある」ということがわかる。このストーリーは、ひとに訴える力がある。「それを作文に書いてごらん」となる。うまく書ければ(経験の言語化ができれば)ESにも、面接にも「使える」話だ。ひとつ宝が見つかった。面接のテクニックを磨くまえにすべきことがある。(岩田一平)