気持ちを切り替えられるか

 ことしの出版会社採用選考は激戦である。大手の春の選考はだいたい終息した。受けている人数が多く、採用する人数はそう変わらないのだから厳しい。それでも挑戦するのは、よいことだ。ただ、なかなか内定にたどりつかないのが現実である。

 内定するか、しないかは適性・センス・学力などいろいろあるが、これだけ志望者が多いと、運みたいなものもあるように思う。面接のときにどんな社員に当たるか、そのひととの相性が結果を左右することがある。作文のタイトルに何が出るかも、それから、採用側はなるべくいろいろなタイプの人を取りたがるから、キャラかぶりした場合は競り合いになる。そういうあれやこれやの要素が複合して合否が決定する。ここが足りなかったと分かれば、まだ気持ちの整理がつくかもしれない。運がなかったと思えたら、それもいいだろう。

 なぜなんだ? なぜ落とす? 最終まで行って落ちると痛手は大きい。しかし、ここで切り替えなければいけない。尾を引いていたら次に障るのである。大手をだいたい受け、それが全滅でも、中堅はこれからだ。

 ところが、大手がだめだとそこでくじける人がいる。もちろん、この会社に行きたいと強く思っていた大手があったのだろう。だが、老舗3社とか好調〇〇社とか、そういうところを軒並み受けて、それが落ちたらもう出版社は諦めるの? 編集者志望でなく、大手志望だったの? よく就活生に言うのは、編集者はどこの出版社でも3年勤めたら経験者扱いで、転職できる。実績をあげたらそれをもって、もっと大きいところとか待遇がいいとかに移ることもできる。あるいは、中堅・中小の出版社も居心地よく仕事できれば、そこで全うするのも編集者として幸せかもしれない。

 

 大手は総合出版社でいろいろな媒体をもっている。一方で、中堅は専門分野・得意分野に絞っている。創業者の強い志があったりする。そういう出版社の色や社風を知っておきたい。いままで全然見ていなかった出版社だからという言い訳はできない。受けるからには企業研究をともかくしよう。相性のいい会社を探そう。わたし自身、新聞社のなかで新聞記者、週刊誌記者・編集者、月刊誌編集長、新書創刊編集長など、いろいろやったが、記者、編集者稼業はおもしろいよ。まだチャンスは尽きていない。やれるだけやろう。失敗しないコツ、それは成功するまでやる続けることだ。これは、新書の編集でかかわった、森ビルの社長だった森稔さん(故人)の至言だ。がんばれ!(岩田一平)