バイデン大統領誕生と、いまから間に合う就活英語

 ジョー・バイデン氏の第46代米国大統領就任式。122日の朝刊はこぞってこのニュースが1面トップを飾った。こういう大きなニュースが載る朝は、宅配の朝日以外の複数紙を近くのコンビニで買ってきて読み比べる。今回は読売、日経、産経を購入した。

 朝日と産経が就任演説のなかにあった「米国(民)結束に全霊」のことばを仲良く見出しに引いている。読売も「分断から団結へ」を主見出しに据えた。日経は「環境・外交政策大転換」がメーンだが、紙面の真ん中の特派員の記事に「民主主義はよみがえるか」とある。民主主義の復権と、分断化された米国の再結束。この2つで各紙足並みがそろった。

だが仔細にみると、各紙の個性がほのみえる。読売は左肩の「論考バイデン政権(上)」で、飯塚恵子編集委員の文章は、「日本は能動的に戦略作りで支え、日米同盟の深化を進めるべきである。」と締めくくる。日米安全保障の行く末が気になってしかたない風情がある。産経の黒瀬悦成ワシントン支局長は、「外交通」と評されるバイデン氏だが、「戦略家」としての肯定的な世評はあまりなく、ロバート・ゲーツ元国防長官(息子ブッシュ、オバマ政権下で)の回顧録が「過去40年間の外交や国家安全保障に関するほとんどすべての主要政策で過ちを犯してきた」と酷評している部分をわざわざ紹介している。トップの記事のなかでも、バイデン氏は分裂回避を演説で強調しているのに、<民主党の一部勢力はトランプ氏の「負の遺産(レガシー)を中間選挙や4年後の大統領選に向けた党派争いの手段にしようとしている。>なんて、書いている。共和党を支持してきた産経らしい。などなどと各紙の個性を読み取ると、おもしろい。

マスコミを志望するなら、べつに海外特派員を目指していなくても、国際的なニュースに関心を持たないわけにはいかない。世界のなかに日本があり、日本だけで解決しないことは多い。マスコミの採用選考に英語はほぼ必須だ。最近は留学経験のある学生も多く、英語が得意という者も多いが、不得意で、どう対策していいかわからないという相談も少なくない(わたしも就活生の四十数年前、英語がまったく不得手だった)。英語はこれまでの蓄積がものをいうので一朝一夕に上達するものでもない。

だが、いまからでもできることがある。それは、日本の新聞の国際面を読むことだ。国際面は、どの新聞(全国紙)もだいたい1面~3面あたりまで続く「総合面」の次あたりにある。紙面のいちばん上の欄外に「国際」とあるのが目印だ。世界のニュースがあれこれ載っているが、ここを1紙でよいからともかく採用試験まで読み込む。そうすると、まず世界のニュースに出てくる用語がわかる(余裕があれば、その用語の元の英語は何なのかスマホでも検索できるので調べる)。WHO(世界保健機構)とかパリ協定とかだ。それから、いま世界で起こっていることの「流れ」が摑める。英語の採用試験はだいたい時事英語の和訳だ。国際面で世界各地のニュースを読んでおけば、問題に出た記事がだいたいどんな経過説明があり、どういう結論になるか予想がつく。用語がわかり文章の流れがわかれば、けっこういいところまでいけるはずだ。

122日付けの米国大統領就任式の記事のなかで出色だったのは、朝日が8~9面をすべて使って、バイデン氏の就任演説の全文を英語と和訳で紹介していることだった。一部を引用して解説するのでなく全容がわかる。これは切り抜きして取っておきたい。その英語は簡潔で、小難しい政治用語も使われず、わかりやすい。万民にわかってもらうために書かれているからだ。日本の政治家もこういう演説をしてほしいなあ。(岩田一平)