1月1日の朝刊を読み比べると

あけましておめでとうございます。

 家で取っている新聞とコンビニで買った3紙の計4紙、朝日・毎日・読売・日経の1面と社説を読み比べてみる。1面は総合面といって、その日の新聞の「顔」である。比べてみることで、それぞれの新聞の特徴が見えてくる。あるいは、各紙ぜんたいを俯瞰することで世の中の大きな流れがつかめる。

 1面の見出しをトップからみてみよう。

 朝日 吉川氏に現金さらに1300万円 鶏卵業者供述 農水相在任前後に

 毎日 中国「闇」ワクチン流入 日本の富裕層接種 <コロナで変わる世界第2部パンデミックと社会1>

 読売 中国「千人計画」に日本人 政府規制強化へ情報流出の恐れ 研究者44人を確認

 日経 脱炭素の主役 世界競う 日米欧中動く8500兆円 排出減特許 日本なお先行<第4の革命カーボンゼロ1>

 朝日は、元農水相の鶏卵業者から500万円授受の収賄容疑について、さらに1300万円もの現金が贈られていた疑いを報じた。他紙にはないので事件続報の特ダネ扱いか。特捜部の捜査のもようが詳しく報じられている。これを読むと吉川氏の収賄容疑は「完全にクロである」ことが印象付けられる。容疑自体は大臣室で受け取ったとされる500万円だが、「その前後に1300万円も!だとすると悪質極まりない」と思わせる記事だ。安倍長期政権の負の遺産、膿は出し切っていないというべきか。

 読売は、中国の海外研究者招致国家プロジェクト「千人計画」に日本人研究者が44人関与していたことが「読売新聞の取材でわかった」とする「発掘もの」いわゆる独自ネタだ。リードの後半には「日本政府から多額の研究費助成を受け取った後、中国軍に近い大学で教えていたケースもあった。政府は、経済や安全保障の重要技術が流出するのを防ぐため、政府資金を受けた研究者の海外関連活動について原則として開示を義務付ける方針を固めた。」とする。記事は、米国が中国の「千人計画」に監視や規制、技術流出防止策を強化している例も引き合いに出している。要するに、日本の優れた人材が中国に狙われているから気を付けろということだろう。社会面トップにも関連記事を載せていて、そのリードには「…研究成果を国力増強に結びつける中国のしたたかさが浮かび上がる」とある。記事を読んでも中国側の談話や反論は出てこない。中国への不信感がにじむ。

 朝日、読売はナマネタのニュースなのに対し、毎日と日経は、長期連載の第1回である(毎日は第2部の第1回)。元日はストレートなニュースが取れにくいので、各紙こうした大型企画の第1回を入れることが多い。ナマネタに対し、缶詰モノ(事前に用意してある記事)なんて言われるが、記者を何人も投入し力が入る。朝日も1面左肩にトップに続く大きさの記事として連載<共生のSDGs明日もこの星で5>コロナ下 ベネチアは澄んだ 観光・経済ストップ 水質改善 という特派員ルポを掲載している。

 さて、毎日。コロナ禍の一断面として、中国製ワクチンを日本の有力IT企業経営者ら富裕層が「中国共産党幹部に近いコンサルタントの中国人」の仲介で接種したという、知られざる事実を発掘している(ニュースと言ってもよい)。違法の可能性もあり、「中国側がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿が浮かんだ」(リード)とある。あれあれ、ここにも中国の“たくらみ”への疑念が指摘されている。

 日経のトップ記事のリードは「世界がゼロカーボンを競い始めた」で始まる。日本もこの流れに乗り遅れるなというのだ。第4の革命とは、農業、産業、情報に次ぐ経済革命ということだ。なにしろ日米欧中各方面の試算を合算すると、この4地域で2150年にカーボンゼロにするには8500兆円もの投資がいるというのだ。おやおや、この日経の連載の冒頭も、中国内モンゴル自治区の砂漠の太陽光発電所(完成すれば山手線の内側に匹敵する広さ。原発2基分の発電量)の特派員ルポから始まっているゾ

 4紙1面で共通する記事があった。それは「都内コロナ感染1337人 過去最多、全国4520人」(読売)。他紙も似たり寄ったりの見出しで、新型コロナウイルス感染が爆発的に増えていることを報じている。

 こうしてみると、各紙の色合いが1月1日1面ににじみ出ている感じがする。そのうえで、4紙を俯瞰してみると、良くも悪くも中国への注目度が目立つ。さらにコロナ禍は焦眉の課題であり、長期的には地球環境が人類の課題であるということか。

                                  (岩田一平)