年賀状は「書く」べし

 中国伝来の暦の数え方、十干十二支(じっかんじゅうにし)すなわち干支(えと)でいうと2021年は辛丑(かのと・うし)にあたる。十干が辛、干支は丑。ふだん気にしないが年末になると思い出すのは年賀状があるからである。わたしは今年も200枚は書くだろう。

 21年の郵便局の年賀はがき発行は19億4198万枚。比較できる年で一番古い04年以来で最低の枚数だったそうだ(朝日新聞による)。昨年は23億5千万枚だった。

 わたしの周りを含め、みなさん、年賀状を出さなくなってきた。

 年賀状は書くべきだ。「書く」というところがミソである。

 まえも少し書いたが、就活生諸君は手で字を書く機会が減っているのである。年賀状を出す人でも、宛名も文面もすべて印刷だったりする。ここでも手書きの機会が失われている。採用選考では、作文(小論文)を作文用紙に手書きで書かすところが少なくない。エントリーシートも手書きでというところもある。ふだん手書きをしていないのに、手書きでとなると、けっこう苦戦する。「あれ?この漢字、どう書くんだっけ」、いつもは変換キーを押せば候補が出てくるのに……。ペンの森には専用原稿用紙がある。体験受講者にはそれに作文を書いてもらう。やはり戸惑う人がけっこういる。

 作文、エントリーシートも数をこなすためにはパソコンで書くのがあたりまえで、ペンの森もそうする就活生が大半なのだが、それはそれでよいから、手で書くことは忘れないでほしい。機会を見つけては手で字を書くクセをつける。手で字を書かないでいると、書く能力が萎縮するのである。筋肉が使わないと萎縮するのと同じく脳ミソもそうなる。

 それからいえば、年賀状はかっこうの手書きエクササイズなのである。わたしは、既製の年賀はがきに自分の住所や電話、メールアドなどは印刷し、あいさつの一言と宛名は手書きしている。年末ぎりぎりに書くのでけっこう苦行なのだが、今年も書くつもりだ。

 年賀状は1年1回だが、手紙やはがきを何かことあるごとに書くといい。たとえば、OBOG訪問したら、即お礼メールするのもよいが、名刺をもらうのだから、お礼のはがきを書く。コロナ禍で会えない田舎のおじいちゃん、おばあちゃんに便りを書くのもよい。なにかいただきものをしたら、感想とともにお礼のハガキを一枚。

 

 新聞社でも出版社でもテレビ局でも、取材先にはお礼の便りをするとよい。取材したらそれっきりで終わらせない。取材先を繋いでゆくことが大切だ。そのためには、手書きのハガキでも手紙でも出すのである。億劫だが、「取材したら出す」を習慣化すればよい。まあ、私自身全部そうできたわけではないので、これは反省を込めても。一期一会でなく、ずっと続いている取材先ほどありがたいものはない。(岩田一平)