面接の日の朝刊は読んだか?

 毎年のことだが、新聞や通信社の記者志望の諸君が「聞かれてドキッとした質問」という虚を突かれる質問がある。まあ、予め知っておけばなんのことはない。用意しておけることなのだけど。それを2つほど紹介しよう。

 まず、新聞社であれば「きょうの〇〇新聞の記事で興味を持った記事、あるいは気になった記事は?」である。必ず聞かれるわけではないが、聞かれがちな、最初の一問なのである。

「しまった!今日に限って読んでいない」。しどろもどろになって「すいません。読んでいません……」と、最初から躓く就活生がいる。朝(昼?)起きる時間が遅い学生は、面接までの時間が短く、読んでいる時間が取れないようなことになる。だが、何がなんでも受ける新聞社の朝刊は読むのである。面接が夕方なら夕刊も読む。1面の主要な記事はむろんだが、自分の関心領域の記事も。むしろ「気になった記事」はだれもが関心をもつ一面や社会面トップの大記事よりも、小さいが、自分にとって「大事な記事」の方が、アピールしやすい。ESの志望動機・最近関心を持った記事などの内容を補強できるかもしれない。それに「そういう小さな記事もきちっと読んでくれている」と思ってもらえることもある。

 NHKなら、朝7時、正午のニュースはマストだ。新聞社・通信社志望も。NHK7時と正午は見る。世の中の最新ニュースがわかるからだ。

 もう一つは、「当社に対して何か質問はありませんか」という逆質問である。

 面接は一方的に「聞かれる」ものだと思ってかかっているから、「聞いてください」でびっくりしてしまう。これも用意しておけばよいのである。なぜ逆質問するのか。そのココロはというと、①企業研究をきちっとやっているか、②質問力(取材力)があるか――この2つが考えられる。「何を聞いたらいいか皆目見当がつきません」という就活生がいるが、たとえば、その新聞社・通信社の記事で、自分も書いてみたいテーマや、調査報道の成果など、「いったい、こんな記事、どうやったら取材できるのだろう?」と思ったら、それを聞けばよい。あるいは「将来、海外特派員になって〇〇のような取材をしたい」という希望をもつなら、そのためにはどういうキャリアを積めばよいか、どんな取材が役に立つかなどを聞く手もある。

 「休みが取れますか」とか「福利厚生施設は充実していますか」とかといった待遇に関する質問は、しないにこしたことはない。新聞社の仕事がしたくて志望しているのか、待遇がよいから志望しているのか、あなたの志望に疑問符がつきかねない。その手のことは、会社のHPに書いてあることも多い。新聞記者は大きな災害や事件があれば、根をつめて連日取材しなければならないことがある。その分、あとで代休など救済措置もある。

やらなければならない時は何がなんでもやる。その気概はほしい。事件事故を追うマスコミにはまだまだ、きつい、つらいがつきまとう面はあるが、10年前よりずいぶんよくなっているし、いまは、そんな、きつい、つらい仕事をさせる会社には人が集まらないので、どの社もそのあたりのことは考えている。まだ足りないところもあるが……。

逆質問はたいがい、あらかたの質問が済んだ最後あたりで振られる。そこで、逆質問が思い浮かばず、「質問に替えて自分の思いを聞いてください」と言って切りぬける人もいるようだ。だが、相手の質問に必ずしも応えていない。企業研究成果・質問力を示せる質問を用意しておけばよいのである。それも1つでなく、複数。

 「すいません!最後に一言いわせてください」は、その面接でじゅうぶん自分の言いたいことが言えずにどうしても不完全燃焼なら、言ってもるべし。一か八か起死回生になるかもしれない。                   (岩田一平)