本命以外もなめてかからない

 マスコミ就活は、いまインターンシップやら早期選考やらが交錯し、就活生は大忙しである。作文、エントリーシート(ES)、面接と、ペンの森の指導も多岐にわたり、わたし一人では手が回らず、OBOGに手伝ってもらう日もけっこうある。

 就活生は、たとえば全国紙A新聞の記者職が志望の本命でも、他全国紙、地方紙、NHK、民放キー局の報道さらには週刊誌のある出版まで、マスコミで世のため人のために働きたいということを就職の軸として、幅広く受けまくる。

これは悪いことではない。「〇〇新聞命(いのち)」と思ってがんばっても就活は相手の社との相性がある。面接でたまたま合わない人に当たってしまうことだってある。倍率が高いと運不運が明暗をわかることがある。本命社しか受けないのは潔いかもしれないが賢くはない。

第一志望でなくても、記者という仕事に就ければ基本やることはだいたいどこでも同じだ。倦まずたゆまず取材し、どうやったら読者に伝わるか頭をひねって記事を書くー―ほぼこれに尽きる。新聞も出版もほぼ3年仕事し実力がついていれば経験者として、他社でも通用する。ペンの森でも、若いうちにけっこう他社に移籍する者がいる。

さて、ここで問題なのは、本命でないところを受けるときの心構えである。本命でなく、それほど関心がなかった社の採用選考だと、ともすると手を抜きがちになる。しかし、採用選考は厳しい。手を抜いている場合ではないのである。ときどき、第一志望でない会社の面接で「当社以外も受けるようだが、もちろん当社が第一志望ですね」と質問され、どぎまぎ、しどろもどろになったという話をきく。こういう話を聞くにつけ、ペン森生に言うのは、「面接会場でイスに座ったその時に、君にとってそこが第一志望だ。そう思って受けないと相手は君の覚悟のなさを見抜くよ」と。

全国紙を目指していて地方紙も受ける就活生のなかに、いささか地方紙をなめている者がいることがある。出版社でも同じだ。三大出版社しか目に入らず、でも心配だからと中堅も受ける。だが、そういう心構えだから入らない。どこも内定が取れないまま、その人の思う「本番」に突入。結局、ぜんぶ落っこちてしまう。これは実話である。

 

どうすればよいかといえば、どんなところでもなめてかからない。企業研究をし、できればOBOG訪問もし、そこの就職選考の傾向と対策を練る。作文練習をする。面接練習をする。そういう積み重ねは、どの会社の就活にも共通で、筆記や面接を本気で受け続けることが内定獲得のためのまたとないトレーニングになっている。ペン森生も最初は一次面接落ちだった者がだんだん二次までいくようになり最終落ちまでいき、最後に内定を取るというコースをたどる者は少なくない。結局内定は一つあればよい。内定を3つも4つも取ってもいかれるマスコミは1社なのだから。(岩田一平)