「都知事ってる」って意味知ってる?

 週刊現代の2月15日号に掲載されているポテチ次郎の連載漫画アー・ユー・ハッピー?にでてくる女子の会話。「昨日の合コンどうだった?」「何か都知事ってたよね」「うん!」

え?何 都知事ってたって・・・」「今回の都知事選みたいにこの人だ!!と思えるような人がいないつまり決め手に欠く感じって意味よ」。たしかにぼくもだれに投票するか困って一時は舛添要一にしようかと迷った。が、すぐに原発ゼロの支持だから細川護熙に戻った。

 

 細川は若い人だけでなく76だぞ、と年寄りもいう。ぼくは持ち場こそ異なるが、同じ時期に警察まわりをした。細川は京大に2度落ち上智を出て朝日の記者になり鹿児島支局から東京社会部に異動する。同じ警察を担当していた読売の記者から聞いた話だが「宴会でだれかが酒をついでくれるまでただじっと座っているだけだった」という。熊本藩主の細川家18代当主の身分が身にしみついて殿さま気分がいっこうに抜けなかったらしい。

 

 大学受験に失敗したから、それなりの挫折は味わっているし、国会議員に転じてからも総理には担がれるものの、あの小沢一郎にいじめられけっこう苦労もしている。政界引退後、というか投げ出し後はTBSラジオでコメンテーターも体験した。週刊文春に連載していた漢詩のふるさとを訪ねるようなコラムは学識の深さを十分に感じさせ、やはり由緒ある家の教養は只者ではなかった。漢詩の読めないぼくなんか同じ世代なのにと悔しかった。

 

 陶芸にいそしんでいることはよく知られているが、展示即売会をやるとたまに1億くらいの売り上げがあったという。細川の名前で売れたと言われるが、素人離れをしたろくろの腕でもあったのだろう。細川家はいまでも熊本では知らぬ人のいない名家だが、東京では通用するとは限らない。世論調査によると都知事候補のニ番手につけて当選はむずかしいらしいが、これとて原発ゼロに切り替えた小泉の応援があればこその2番である。

 

 細川と同じ脱原発を唱えているのは、共産党と社民党が推薦している宇都宮だが、どうして同一主張なのに宇都宮は細川と組まないのだろう。そこは党派性というわが身大事のわがままな関係のせいだ。社民党の源流は戦後の大野党日本社会党だが離反相次ぎ、いまやあるかなきかの存在に落ちぶれた。独自候補を擁立できない民主党の体たらくが「都知事ってる」最大の原因だろう。健全な野党がないので原発推進自民の一強支配を招いた。

 

 「日本は燃料に乏しい国だが、主要な工業国の中でも再生可能エネルギーにはもっとも恵まれており、現在行われているプランよりも小さなコストとリスクで、エネルギー効率の高い長期的なエネルギー需要を全体として満たすことができる」と『新しい火の創造』という本の序文にある。物理学の権威エイモリ―・B・ロビンスの著作だ。世界の地熱発電の機器は大半が日本の電気メーカーの製品、というドキュメンタリーを見たこともある。

 

 ドイツは3・11の2ヶ月後に脱原発に政策転換した。2020年の東京五輪招致で浮かれているが、大震災からまもなく3年、14万人が故郷を失って県外に脱出したままの福島のことを忘れちゃいけない。都知事ってるなかでも、細川は大震災被災者に心配りをするから支持したい。

 

瀬下恵介(ペンの森主催)

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